記事監修:品川スキンクリニック 表参道院 院長 石橋 正太

今からできるケアが10年後、20年後のあなたの肌を変える
年齢とともに気になる顔のたるみ・しわ・しみ。ほうれい線や目の下のしわ・たるみによって、実年齢より上に見られてしまった、疲れているように見られてしまった、という方も多いのではないでしょうか。
最初のうちは「このしわが気になる」というような部分的な悩みだったのが、「最近では鏡を見るのも嫌になった」という方のお話も聞きます。
あるアンケート調査では、30歳を過ぎるとなんと9割以上の女性が顔のたるみ・しわが気になっていると回答していました。

出典:HUMA Group 会員アンケート
油断は禁物!!目のたるみから顔のシワ・たるみが起こる?!
これだけ多くの女性を悩ませているたるみ・しわ。
美容医療に携わる医師としてアドバイスするならば、「今からできるケアが10年後、20年後のあなたの肌を変える」ということです。
顔のたるみセルフチェック
まずは以下で、顔のたるみ度をチェックしてみましょう。
- 口元に八の字の線(ほうれい線)がある
- 目の下まぶたに影、またはふくらみがある
- 頬の毛穴が縦長になってきた
- 二重あごになっている、もしくは人に言われたことがある
- 口角が下がっている
- 顔の輪郭がはっきりしなくなった(輪郭がぼんやりしている)
- 肌が全体的に乾燥している
- 顔より、首のほうが色が白い、もしくは顔がくすんでいる
チェックが1つでもあれば、そろそろたるみケアに力を入れたほうが良いでしょう。3つ以上チェックがある方は、化粧品で対応できるレベルではない可能性がありますので、気になる場合は美容のかかりつけ医に相談してみてください。
顔のしわとたるみの5つの原因
ここでは、顔のしわとたるみの原因となる、5つの要素を紹介します。
1.表情筋の筋力低下

表情筋の衰えにより、ほうれい線やマリオネットラインができる
顔の表情筋は手足の筋肉とは異なり、表情を作るために、骨ではなく皮膚に直接筋肉がついています。
加齢に伴って体の筋肉が衰えるのと同様に、顔の筋肉も衰えていきます。また、日本語は顔の表情筋の約20%しか使用しないことや、固い食べ物を噛むような表情筋を鍛える動作が減っていることなどから、昔よりも表情筋が衰えやすくなっているといえます。
表情筋の衰えにより、ほうれい線や口角の横にあるマリオネットラインができやすくなるのです。
2.皮下脂肪の肥大化
皮下脂肪は、エネルギー貯蔵・保温といった生命を維持するための働きがあります。
この皮下脂肪は、老化によって代謝機能が衰えると肥大化します。表情筋が衰え支えが弱くなった状態に加え、さらに皮下脂肪の肥大によって重力に耐えられず、より下方向へ落ちてくるのです

<顔の脂肪のコンパートメント>
顔の脂肪は一様に広がっているのではなく、顔の靭帯や筋肉が境界となり、部分的に分かれています。血管からの栄養補給も、それぞれのパーツごとに異なります。この脂肪が肥大もしくは移動すれば、薄い皮膚が支えられずにたるみが生じ、脂肪と筋肉のあいだに溝ができることがあります。これにより、「ゴルゴライン」「目の上」「目の下」のへこみができるのです。
3.皮膚への栄養供給の低下
皮下組織は血管から血流により栄養をもらい、毛細血管などを通して末端へ栄養を運びます。
しかし、加齢により筋肉が衰え、皮下脂肪の重みによって皮膚が垂れ下がることで、血管が引き伸ばされて細くなり、血流量が減少し、皮膚の表面にまでじゅうぶんに良い栄養を届けられなくなります。これによって肌の弾力がなくなり、同時に顔全体がたるみ、結果として毛穴が縦に見えるようになります。
これが「帯状毛穴」「たるみ毛穴」と呼ばれるものです。

皮下組織とたるみの悪循環

健康的で若い肌の組織
4.肌の弾力の低下

シワとたるみは見た目年齢を大きく左右します
加齢による毛細血管の機能低下、たるみにより血液供給量が下がると、肌の弾力の元となる真皮にも影響が現れます。真皮組織はコラーゲンやエラスチンといった線維、ヒアルロン酸などの潤い成分が、網目状のネットワークを作ることで肌のハリと弾力をキープしています。
それらを生成する機能は、20代をピークに急速に衰えてしまいます。(詳しくは肌細胞についての記事にて説明しています)加齢や血流不足、紫外線の影響などにより、これらの組織が減少・変性すると、肌の弾力やハリが失われるのです。

お肌のハリ成分は急速に減少します
引用元:品川スキンクリニック “線維芽細胞培養移植『セルリバース』”
5.皮膚の乾燥

紫外線は乾燥の大敵
水分保持の役割を担う表皮、肌の弾力を保つ真皮はお互いにつながり、連携プレーを行っていますので、表皮の働きが悪いと正常な保護機能が働かず、真皮にダメージを与えてしまいます。
また、肌を守るバリア機能がしっかりと働かないと、紫外線などの影響がダイレクトに表皮に届いてメラノサイトを刺激し、しみができやすくなります。
紫外線はさらに、真皮組織のコラーゲンやエラスチンといった線維を破壊するため、乾燥を加速し、たるみやすい肌になってしまうのです。
たるみ・しわの解消法は?
よくメディアで見かける「たるみを引き上げるクリーム」や「家庭用美容機器」は1つあってもいいと思いますが、それは肌のたるみを根本的に解消してからホームケアとして使用するのがおすすめです。
アンチエイジング効果があたかもあるかのように唱っている商品は数多ありますが、医学的根拠に基づいて効果が実証されているものはほとんど無いと言っていいでしょう。そういったものは医療機関でしか取り扱うことができないからです。
美容医療でできるたるみ対策は、以下のようなものがあります。
- 高周波や超音波など照射機器によるタイトニング
- フィラー(ヒアルロン酸など)による注射
- リフトアップのための糸や繊維を使用した施術
- 真皮刺激によるコラーゲン生成のための糸や繊維を使用した施術(肌質改善)
- フェイスリフト術
いろいろ種類があると迷いますよね。そこで、それぞれの治療効果をまとめてみました。
照射機器 | ヒアルロン酸 | 糸や繊維 | フェイスリフト | |
---|---|---|---|---|
傷 | 傷が残らない | 傷が残らない | 傷が残らない | 傷が残る |
治療回数 | 1~6ヵ月ごとに定期照射 | 3~数ヵ月ごとに繰り返し注入 | いつでも施術が受けられる | 生涯で3回が限度 |
効果 | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
痛み | 熱照射での痛みあり | 注入中の鈍痛あり | 麻酔時の痛みあり | 切開後の強い痛みあり |
腫れ | 腫れない | 若干、麻酔でむくむ程度 | 麻酔で若干むくみ、内出血はあまり出ない | 切開法なので腫れが出やすく、内出血の可能性が高い |
なぜ、いくつもの治療があるのでしょうか?
少しまえまでは、フェイスリフトは顔の筋肉(スマス筋)からたるんだ皮膚を切除し、引き上げることができたため人気でした。しかし、こうした切開術は、リフト効果があるものの、頭皮などの血流を阻害し、長期的には肌にとって結果に結び付かないことが指摘されてきました。
そこで、フェイスリフトでも切開幅を小さくするものや、より体への負担や治療時の痛みを和らげ、リフト効果を得られるレーザーや高周波、超音波などの照射機器治療が出てきました。
照射機器治療は肌に良いのですが、持続効果が短いため、「もっととリフト効果を感じたい」「ダウンタイムが気にならない」として、糸や繊維の治療の人気が出てきたのです。
すなわち、医師と患者さんの希望により、ローリスクで効果のある方法が生まれたということですね。
「糸や繊維を使用した施術」のメリットとデメリット
では、「糸や繊維を使用した施術」には、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
メリット
- リフトアップ効果がある
- たるみの改善
- 真皮刺激によるコラーゲン生成が起きる
- コラーゲン生成により肌のハリ・ツヤを得られる
- 気になる部分だけを改善できる
- たるみ全体が気になる場合は全体的にケアできる
- 肌の血流改善効果により美肌になる
デメリット
- 注入口が消えるまでに10~14日ほどかかる(個人差あり)
- 肌の引きつれを10~14日ほど感じる(個人差あり)
- 内出血の可能性があり、完全に引くまでに10~14日ほどかかる(個人差あり)
もちろん、治療の際はメリットとデメリットをきちんとご説明し、患者様に合った方法を選択しますが、「糸や繊維を使用した施術」は短期的な効果と長期的な効果の両方を同時に得られますので、多くの方におすすめできる方法です。
繊維によるたるみの解消治療と実際の施術方法
実際に、私自身が施術をした際の動画がありますので、ご覧ください。
【施術の流れ】
- 1.肌質を改善したい場所を患者さんと相談しながら決めていきます。
- 2.繊維を挿入する場所に印をつけます。
- ※写真は、私が自分自身で行ったときのものです。通常は患者様自身ではなく、医師が印をつけます。
- 3. 局所麻酔をします。細い針を使うので、痛みは少ないです。
- ※私が鏡を見ながら行っている写真ですが、通常、患者様には横になった状態で、笑気麻酔を嗅いでいただいた状態で行います。
- 4. 笑気麻酔、局所麻酔が効いた状態で繊維を挿入します。痛みはほとんどなく、触られている、押されている感触があるのみです。
- 5. 約25分で処置は終わります。処置直後は局所麻酔が効いているため、まぶたや口周りに違和感がありますが、2時間程度で局所麻酔の効果は切れますのでご安心ください。
【症例写真】
たるみのリフトアップだけでなく血流改善もしていますので、顔の血色が良く、若々しい印象になりますね。「糸や繊維の治療」はおすすめの治療です。
一人ひとり最適な方法でしわ・たるみを解消!
たるみ・しわの改善には以下の方法が有効です。
- 高周波や超音波など照射機器によるタイトニング
- フィラー(ヒアルロン酸など)による注射
- リフトアップのための糸や繊維を使用した施術
- 真皮刺激によるコラーゲ生成のための糸や繊維を使用した施術(肌質改善)
- フェイスリフト術
顔の悩みは人によってさまざまです。ほうれい線や目の下のしわ・たるみが気になる方、年齢より上に見られたり疲れているように見られたりする方、「ここがこうだったら」という悩みある方は、ぜひ美容のかかりつけ医に相談してみてください。
■この記事に関する治療ページ
■この監修ドクターがいるクリニック
【石橋正太先生 オフィシャルブログ】 http://ameblo.jp/cosmetic-dr/
石橋 正太先生の プロフィールは こちら